第15章 マジカルハロウィンナイト
キバナさんが、オニオンくんの頭をぽんぽんする。
「そう言いながら、お前もこの子と踊りたいんだよな?オニオン」
「いえ…あのっ、ボクは…」
「よし、オニオンは三曲目だな!」
「えっ…だっ、ダンデさんまで…!」
「ハハハッ!オニオンもナナに楽しんでほしいんだろ?なら一緒に踊ろうぜ!」
両手を腰に添え、ダンデさんが豪快に笑う。
オニオンくんは、仮面の下から私をジロリと見つめてから、ゆっくり、申し訳なさそうに頷いた。頭上では、シャンデラがワルツに誘うようにくるりと回る。
「よし、舞踏会の幕開けだ」
キバナさんが、胸の前で右手を添えて一礼してから、手のひらを上にして私に差し出した。所作がわからず、そっと指先を乗せると、まっすぐこちらを見据えながら口の端を上げた。
手を取り、フロアへと導かれる。
「私、こういうのわからなくて…」
「堅っ苦しいのはオレもあんまり好きじゃない。だが、決めるとこはビシッと決めるのがオレ様だ」
キバナさんの手が背中に添えられる。手のひらの熱が薄い布越しに伝わり、それだけで心がチリチリと火傷してしまいそうだ。
「緊張してるか?」
「はい、とても」
「ハハッ、そりゃあするよな!」
軽快に笑い飛ばしながら、ワルツの姿勢へと導いてくれる。手と手を結び、片手を肩に添え、曲に合わせて最初の一歩を踏む。
「はじめからうまく踊ろうと思うな。まずは曲に乗って楽しむ、それだけを考えろ」
(まずは曲に乗って、そして、楽しむ…)
1、2、3、1、2、3——頭で拍を数えながら、キバナさんの動きに合わせて拙いステップで必死についていく。
「そうそう、その調子だ」
身体が自然と動くように導かれていくと、不思議と呼吸のタイミングまで合わさって、徐々に音楽と一体となる。キバナさんのステップは大胆で、それでいて私の動きに合わせてリードしてくれて、私のステップも少しずつ迷いがなくなっていった。