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【ポケモン】パシオで恋して

第15章 マジカルハロウィンナイト



「このままリタイアして帰るか、脱出チャレンジするか、どちらを選ぶ?」

「脱出チャレンジってなにをするんですか?」

「そっ、それは…」

答えようとしたオニオンくんに向かい、キバナさんがニコニコしながら口元に人差し指を立ててシーッとした。

「お前が早く彼氏に会いたい気持ちはわかる。でも、アカデミーを貸し切ってこのバカでかいおばけやしきを運営してる側としては、せっかくだから存分に楽しんでもらいたいってのが本音だ」

「肝試し的なものだったら、私はちょっと…」

不安がる私を一瞥し、キバナさんは視線を遠くに向けた。

「見てわからないか?なにをするか」

ワルツが流れる大広間を見渡す。目に映るのは、楽しげに踊り続ける人々とゴーストポケモンたち。魔女の格好や、ドラキュラ、ゾンビ、キョンシーに、ミミッキュのフードを被るかわいい姿の人もいる。

「あ……仮装すればいいとか?」

「半分正解。パーフェクトな解答は——」

不意に手を取られ、ドクンと鼓動が跳ねた。キバナさんは、流れるような動きで私の背中に手を添える。

「舞踏会のドレスコードでワルツを踊る、だ」

「わっ」

急に始まったダンス。足がもたついて転びかけるも、キバナさんの手が私をワルツのフォームへと導く。

「ここまできたんだものな!参加していくよな?」

「待ってください!私、ワルツなんて踊ったことないです!」

「ハハハッ!ほとんどの客がそうだから安心してくれ!」

キバナさんにリードされながら、見よう見まねでステップを踏む。くるくる回って、紅茶の中で踊るティースプーンになった心地だ。

「でも、グリーンを探してるんですっ!」

「グリーン?そういえばさっき見かけたな」

「そうなんですか?じゃあまだここにいるかも!」

「舞踏会で再会なんて粋な演出だな!ならドレスアップして驚かせようぜ」

ふわりとステップが止まり、トンと優しく肩を叩かれる。

「オレ様、コーディネートは得意中の得意なんだ。任せておけ!」

キバナさんが親指でレンタル衣裳の受付を指し示す。

「…いっ、行きましょう…ナナさん、こっちです…!」

オニオンくんがゆらゆら歩いて先導する。


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