第15章 マジカルハロウィンナイト
最後のエリアの大きな扉を開くと、今までとはまるで別の世界が広がっていた。
「わぁ…すごい…!」
「最後は、ゴーストポケモンたちの舞踏会です…!」
宮殿の大広間のような豪華な空間では、本物の弦楽がワルツを奏で、たくさんの人が曲に合わせてステップを踏んでいる。その頭上ではゴーストポケモンたちが楽しげに飛び回り、愉快で華やかな舞踏会が開かれていた。
怖さはまったくなく、むしろハロウィンらしい賑やかな雰囲気に胸が弾む。ワクワクしながら踊る人々をぐるりと眺めた。
もしかしたら、ここでグリーンが待っているかもしれない。そう思って会場を見回すけどそれらしき姿は見つからなかった。
「…グリーンさん、いないですか?」
「うん、もう出口かもね」
「そうですか…」
賑わう大広間。ふたりでポツンと立ち尽くしていると、背後から声をかけられた。
「ようオニオン、仕事ほっぽり出してデートか?」
振り返ると、頭にバンダナのように包帯を巻いた燕尾服姿の男の人がいた。
褐色の肌にタレ目がちな瞳、抜群のスタイルを誇る高身長の男性——
(き、キバナさんだ!)
いつもファンに囲まれている、あの人気絶頂のキバナさんが目の前にいる!
「歳上を捕まえるなんて、将来有望だな」
スマホロトムを持った手を口元に添え、くつくつと笑う。
「…ちっ、ちがいます…決してデートでは…!」
オニオンくんは身体ごと横に揺らして、全身でNOを表現している。
「フフッ、真に受けるなって。さっき無線で迷子がいるって連絡が入ったから状況は把握してる」
「やっぱり私って迷子扱いなんだ…」
とぼやくと、キバナさんが私をジロジロ眺めてきた。視線がぶつかり、気恥ずかしさに咄嗟に逸らすと、ニーッと目を細めて笑いかけてくる。
「ここは最後のお楽しみ。言うなれば、怖い思いをしてきた客を喜ばせるボーナスエリアだ」
「選択肢はふたつ」と言いながら、キバナさんはピースサインを向けてきた。