第15章 マジカルハロウィンナイト
「わぁ、かわいい」
屈んでパンプジンの顔を覗き込む私の背後で、オニオンくんが解説を始める。
「小さなパンプジンは…子どものフリして油断させ…」
続いて大きなパンプジンが近づいてきて、しゃがんでいる私を見下ろしてきた。
「大きなパンプジンは…大人のフリをして連れ去ると…言われています…」
気づけばいつの間にか、数匹のパンプジンに取り囲まれている。
「あれ…なに?みんな?」
オニオンくんが、モンスターボールから自分のパンプジンを呼び出した。
「そして、ボクのバディのようなとくだいサイズのパンプジンは——」
じりじりとパンプジンたちが距離を詰めてくる。
「——力ずくで…」
突然、数匹のパンプジンが毛状の葉を伸ばしてきた。葉が両手足に絡みつき、体の自由を奪われる。
「え…?い…いやッ」
恐怖でパニック状態に陥る。パンプジンたちに全身を葉でがんじがらめにされ、オニオンくんが視界から見えなくなる。思考が追いつかないまま無我夢中で手を伸ばすと、小さな手が私の腕を掴んで引っ張った。
「ダメだよ…!連れて、いかないで…っ!」
必死に私を引き止めるオニオンくんの声がする。
すると、パンプジンたちは素直に声に従い、しゅるしゅると葉を縮めて離れていった。
拘束から解放され、なにがなんだかわからないまま体を起こす。起き上がろうとすると、オニオンくんが手を引いてくれた。
「こわかった…これも、演出…?」
衣服についた土埃とパンプジンの葉を払いながら問う。
「…おとなしくしているようお願いしていたんですが…イタズラしたくなったみたいです…」
「イタズラ?」
聞き返すと、バディのパンプジンをボールに戻しながら小さな声で、
「よかった…あの世に連れていかれなくて…」
そのひと言にサーッと血の気が引く。
オニオンくんはスミレ色の瞳を妖しく光らせる。かわいくてあどけない声や態度とは裏腹に、どこか不気味で人ならざる雰囲気を漂わせている。
素顔の見えない仮面の下で目が合い、背筋がゾクリと凍りついた。