第15章 マジカルハロウィンナイト
腕で顔を覆う男の子に、先ほど拾った仮面を差し出した。
「これ、落し物なんですけど…」
「えっ」
男の子は顔を隠したまま、驚いたように指の隙間からこちらを覗き込んだ。
「それ…ぼっ、ボクの…!」
小さな手が勢いよく仮面を掴んだ。慌てた様子で背中を向けると、あたふたと仮面を顔につけている。
男の子は、仮面が外れないか手でペタペタ触って確かめてからゆっくりと立ち上がり、蝋燭の炎のようにゆらりと私へと向き直った。
仮面で顔はわからないけど、バケッチャモチーフのかわいらしいハットに、カボチャを模したショートパンツ、マントをふわりと揺らすその姿はとても愛らしい。
「あのっ、ボクの仮面…みつけてくれて、ありがとう…ございます…」
たどたどしくも礼儀正しくぺこりと頭を下げてくる。
「キミのだったんだね。持ち主にすぐ返せてよかった」
「ボク、仮面がないと人と話せなくて……隠れてゲンガーに探してもらってたんです…」
「そっか、だからさっきゲンガーが驚かせてきたんだ」
きっとゲンガーは私から仮面を取り返そうとしたんだろう。
「怖がらせちゃってたら、その、すいません…」
「ううん、トレーナー想いのやさしい子なんだね」
いつのまにか男の子の隣にさっきのゲンガーが戻ってきている。ゲンガーは私たちの話を聞いて愉快そうに笑っているけど、私と目が合うと、姿を消して見えなくなった。
ゴーストポケモンって、かわいいけど、やっぱりちょっと怖い。
「いつもは予備を持ち歩いてるのに、今日は置いてきちゃって…ほんとに、ありがとうございました」
「いつも仮面を被ってるの?」
「はっ、はい…顔を見られるのが苦手なので…」
「そうなんだ、じゃあ無くして大変だったね」
「大変でした…なので、助かりました」