第15章 マジカルハロウィンナイト
安全確認したところで、ため息をひとつ。
(不気味っちゃ不気味だけど…)
落とし物ならスタッフに預ければいいし、もしかしたら「実は秘密の扉を開く鍵でした」みたいな重要なアイテムかもしれない。そう思い、仮面を持って行くことにした。
次のエリアにつながる扉にゆっくりと近づく。
(なにも起こりませんように…!)
強く祈りながら、震える手でそっと扉に手をかけた時だった。
肩になにかが触れて——ぬるんとした感触に背筋が凍りつく。
見てはいけない、直感がそう訴えているのに、反射的に振り返ってしまった。
「っぎゃああああ!!」
突然のゲンガーの「べろべろばー」に、バクオング級の悲鳴を上げながら勢いよく扉を押す。扉の向こうは外につながっていて、出口に着いたと一瞬希望を抱くも、現実はそう甘くはなかった。
次に訪れたのは古びた墓地だった。足がもたつきながら猛ダッシュで適当な墓石の後ろに滑り込む。息を整えながら、震える肩を手で押さえ込んだ。
もう日は落ちて、ゾンビ映画なら今頃彼らが墓から出てきて踊り出す時間だ。
(帰りたい…リタイアしたい…グリーンに会いたい…)
とりあえず、おばけ役のスタッフでもいいから人間に会いたい。
その場に留まり、息を殺し数分後——そろりそろりと墓石から顔を半分出す。ゲンガーの姿は見えない。
誰か人がいないか見回してみると、墓地の端っこでしゃがんで震えている人影を見つけた。
背丈的に子供だ。私と同じくはぐれちゃったのかな。
「あのっ」
立ち上がり、近づいていく。罠じゃありませんようにと祈る。罠だとしても泣きついてリタイアと伝えよう。
「大丈夫?迷子になっちゃったの?」
「こっ、こないで…」
幼い声。やっぱり子供だ。でもそういえば、参加資格は15歳以上って受付で言っていたっけ。ということは、おばけ役のスタッフだろうか。
「…もしかして、おばけやしきのスタッフですか?」
「そう、ですけど…でもっ、ボクは…」