第15章 マジカルハロウィンナイト
ポリゴンフォンをポケットから出す。グリーンに電話しようと画面を見ていたら、最悪なタイミングで充電が切れてしまった。
「うそ…でしょ?うそだ…うそ…」
連絡手段も絶たれ、絶望に打ちひしがれる。
がんばるとは言ったけど、まさかひとりぼっちになるとは思わなかった。
このままここでスタッフが通るのを待つか、もしくは他のお客さんが来たらスイッチを押してもらおう。そんな淡い期待にかけて、壁際で膝を抱えてうずくまる。
息を潜めてひとりで暗い場所にいると、だんだんと聴覚が冴えてきた。
遠くの悲鳴、走る足音、どこかの部屋から漏れる不気味なBGM。グリーンの声が聴こえたらいいのにと思ったけど、さすがにわからなかった。
5分ほど待っただろうか。
一向に誰も来る気配はないし、じっと留まっている方がかえって怖くなってきたので、意を決して立ち上がった。
「うぅ…グリーンどこぉ…」
暗い廊下をしばらく道なりに進んでいく。常に緊迫した精神状態だからか、数メートル進むのすら疲弊した。
(迷子ってこんなに心細いんだ…)
よくNと調査してると、迷子のポケモンや子供に遭遇するけど、これからはより心に寄り添って接すると誓った。
周囲に警戒しつつ少しずつ前進していると、つきあたりに扉を見つけた。
扉の向こうでグリーンと合流できますように!と、一縷の希望を胸に進むと、カツンとなにかがつま先にぶつかった。恐る恐る視線を落とす。
「…仮面?なんでこんなところに…」
目と口元をくり抜いただけの、かぼちゃ柄の仮面が扉の手前に落ちている。こんなにまざまざと通路の真ん中に落ちているのであれば、仕掛けか落とし物だろう。
指先でツンツンしてみる。特に異常はなさそう?下にまたスイッチがないか確かめてからそっと拾い上げる。
やはりなにも起きない。