第15章 マジカルハロウィンナイト
鏡の迷路を抜けた先——
ゴーン…ゴーン…
古い洋館のような部屋に出ると、柱時計の音が静寂の中際立って響いた。
その音に思わず身体が硬直する。
すると今度は、柱時計からゴーストポケモンの群れが飛び出してきた。ヨマワルとカゲボウズがこちらに目がけて飛んでくる。
「——いッ」
顔を引き攣らせた私の手を、グリーンが強く引く。けれど、足がすくんで動けない。
「ナナ?」
ケラケラとポケモンたちが怖がる私を嘲笑っている。
「も、もうっ、いやだっ、リタイアする!」
「向こうに扉がある。あそこまで進んだら大丈夫だ」
「やだ——って、わぁっ!?」
後退ると、足元にあったレンガのようなスイッチを踏んでしまった。ガコンと鳴った次の瞬間、それを合図にさらに大量のゴーストポケモンが部屋中に現れて空中を舞う。
「う…ぎゃあああああッ!!」
可愛げなんてまるでない悲鳴を上げる。
「部屋を出るぞ!」
柱時計がかけられた壁には3つのドアがある。大量のゴーストポケモンにもみくちゃにされながら、グリーンと真ん中のドアを開けて勢いよく戸を閉めた。すると、ゴーストポケモンたちは部屋の外までは追ってこなかった。たぶんそういう“演出”なんだろう。
選んだドアの先は、遮光カーテンで光を遮られた薄暗い廊下だった。蜘蛛の巣や蝋燭の灯、床に散乱する壊れた人形などが不気味さを増長させている。
「はぁ…はぁ…こ、こわかったけど、ひとまずここは静かだからあんぜ——」
グリーンに視線を向けると、見慣れたシルエットではない別のモノが目に映る。
結んだ手を見やる。
私がしっかりと握りしめていたのは、ジュペッタの頭の先っぽの布地だった。
「ーーーーッ!?!!?」
声にならない叫びを上げながら、冷たい廊下の壁に背中をつける。
「ケケケケッ」
ジュペッタはふわりと浮かび上がると、笑い声を残して消えていった。
急いでドアへと戻る。だけど一方通行になっているようで、ドアノブを回してもびくともしない。
名前を呼んでも返事はない。恐らく、グリーンも騙されて違うドアに入ってしまったんだろう。
「ランタン…ない…リタイア…できない…」
グリーンと、はぐれてしまった。