第15章 マジカルハロウィンナイト
「マツバさん、ハルトくん!」
笑顔で近づいてくるふたりに向かい手を振る。
マツバさんはマントに貴族風な服でドラキュラの仮装、ハルトくんはツノと尻尾と槍で悪魔の姿。どちらもとっても似合ってる。
「ゴーストの館へようこそ」
「ようこそ!」
マツバさんがマントを翻し、うやうやしくお辞儀をすると、続いてハルトくんも槍を上げてかわいく挨拶をした。並んでいる女の子たちがふたりの決めポーズをパシャパシャ撮っている。
「へぇ、気合い入ってるな」
「まぁね、ぼくらオカルト研究部も依頼を受けて、今回のイベントに協力しているんだ」
「気合い入れて仕掛けを考えたんで、ぜひ楽しんでください!」
「そうなんだ!……で、それってどれぐらい怖いの?」
私の質問に、ハルトくんはニッカリしながらサムズアップした。
「ゴーストポケモンの魅力をたっぷり伝えられる自信はあるよ!」
「それ怖いってことだよね?」
「でも絶対楽しいですから!」
ハルトくんの笑顔が私の決意を揺さぶってくる。悪意なく純粋に楽しんでもらいたいという思いは、なによりも私の心をぐらつかせる。そんな私の心をわかりきっているグリーンは、嬉しそうにニヤニヤしている。
「ナナ、せっかくだから入ってみようぜ?」
「おや?並んでいたんじゃなかったのかい?」
「怖いのが苦手らしくてさ」
グリーンはやれやれと肩をすくめながら、両手をひらりと広げてみせる。ちらりと私と目が合うと、その顔には余裕の笑みを浮かべていた。
「そういえばこの間の検証もとても怖がっていたね。無理はしなくていいからね」
そう言いながらも、マツバさんは残念そうに笑う。胸が痛い。マツバさんにそんな顔をさせたくない。心から笑ってほしい。
すると、ハルトくんがさらにおいうちをかける。
「そっか、押し付けはよくないですよね……いくらオカ研のみんなで朝から放課後までがんばったからって……」
「……せっかくだし、ちょっとだけがんばってみようかな」
「やった!グリーンさんと楽しんでください!」
「ハルトくん、切り替えはやくない?」