第15章 マジカルハロウィンナイト
先日のパシオアカデミーで起きたゴーストポケモン騒動の犯人は生徒だった。けれど、学校側のはからいでそのことは公にはしなかったらしい。
でも、人の口に戸は立てられない。噂はあっという間に広がって、生徒の間はもちろん、冷やかしの観光客まで学校見学に来る始末だ。
ただ、そんなネガティブな話題ですら利用してしまうのがライヤーさんのすごいところ。その騒ぎをネタに、アカデミーを貸し切った巨大おばけやしきのハロウィンイベントを実現させてしまった。
このハロウィンイベントは、アカデミーの関係者やトレーナーたちが協力しているらしい。パシオのイベントはトレーナーの協力で成り立っている。有名トレーナーは話題性もあるし、ファンや観光客が喜ぶからうってつけなのだそう。
「所要時間1時間だとよ。どうする?」
入り口の案内を見て、グリーンが聞いてくる。
「どうするって、入るわけないでしょ」
「オレと一緒かひとりで肝試しか、どっちがいい?って意味だよ」
「そんなの、ゴースとヨマワルどっちが怖くないか聞いてるのと変わんないんだけど」
「どっちもいいってことか」
「どっちも怖いってこと」
パシオアカデミーのおばけやしき。興味はあるけれど、1時間も恐怖に耐えられる自信はない。
長蛇の列を見て、みんな日常に刺激的ななにかを求めているんだなぁと遠い目をする。平和がいちばんなのに。
「私、ハロウィン限定スイーツが食べたいな」
「おばけやしきで遊んだ後な」
「待ってるからひとりでどうぞ」
「なにが楽しくて野郎ひとりでおばけやしきに入るんだよ?」
「なにが楽しくてわざわざ怖がりに行かなきゃいけないの?」
「怖いのが楽しいんだろ」
「楽しくない怖い」
「やぁナナちゃん!」
両者一歩も引かずに列の最後尾で言い合っていると、さわやかな声が私の名を呼んだ。