第14章 メイ探偵とゴースト
「お前、気の毒な頭してんだな」
試しにからかってみたら、案の定、オレの挑発に面白いぐらい食いついてきた。
「しつこい、うるさい!あんたには関係ない!」
「いいや、ある」
「はぁ?」
「あいつに手を出したら許さない」
そう宣告すると、女は心底嬉しそうに顔を歪ませた。
「傑作!まさかあんたもあんな女を好きなの?相手にされないから影でストーカー?なら、一緒に手を組んで別れさせない?」
「ああ、悪くない誘いだな」
「でしょ?やったぁ!」
「——なんて言うと思ったか?残念だったな」
最高に皮肉って笑ってみせると、女の髪の毛が逆立つ。サイキッカーってのは感情が能力に出るもんなのか?
「どうして?あいつが別れたらあんたもチャンスなのに!」
「ハルトはあんたを心配して寮にまで送った。あんたを気にかけたり、必要としてる人はいるんだ。それに気がつかないでないものねだりばっかり。だから気の毒な頭だって言ってんだよ」
盗み聞きするつもりはなかったが、寮へと向かう道中の会話は聴こえていた。ハルトは友達がいないといじけるこの女に、部活を勧誘していたし、一緒に授業を受けようとも誘っていた。
噂で、ハルトはパラレルワールド——いわゆる平行世界からから来たと聞いた。顔馴染みのヤツらが誰ひとり自分の存在を認識していないなんて、普通に考えたら気が狂ってもおかしくない。
だが、ハルトは持ち前の明るさと好奇心で、それすらも楽しんでいるようだ。だからこそ、他人を陥れて憂さ晴らししていたこの女に対しても、共に楽しく過ごせるように自分から誘ったんだろう。
そんなハルトの思いを裏切るこいつが、オレには無様に見えて仕方がなかった。