第14章 メイ探偵とゴースト
文字通り、理性を試されている。そしてこれを誰も止めないのはなぜ?みんな演技だと思ってるのだろうか。
「あれはただの台詞で…グリーンは意地悪で私が困るのを見て喜ぶ変態なの!Nは違うでしょ!」
「どうだろう?」
「え!?」
裏切られた心地になり、驚愕の表情を浮かべると、Nは声を上げて笑った。
「ハハハッ!ナナは大袈裟で面白い。おかげでボクも冗談というものを学習できたよ」
「心臓に悪いよ!」
「でも、からかいたくなる彼のキモチがわかったかもしれない。キミの反応が愉快だから、つい困らせたくなるんだろう」
「ひどいなぁっ」
この奇妙なムードを壊すようにわざとらしくむくれてみせる。だけどNは解放してくれない。
「キミといると、トモダチといるような気持ちになるよ」
「それ…ポケモンみたいってこと?」
「うん、だってポケモンは絶対にウソをつかない。キミもわかりやすいから安心して話せる」
なんでみんな私をポケモン扱いするんだろう。私ってそんなに単純なのかな。
嬉しいような嬉しくないような、複雑な気持ちになって見上げる。目が合うと、Nはやわらかな笑顔で見つめ返してきた。そして、長い指でサラサラと私の髪を掬ってくる。
ほんの少しの間だったけれど、その仕草があまりに自然で、私も無意識にそれを受け入れていた。
ふと、Nの手が離れる。
「今、なぜ…ボクは…」
Nは驚いたように目を見開き、戸惑うように自分の手のひらを見つめた。
「どうしたの?」
月が昇り、青白い光がNを照らす。月明かりを浴びたその端正な顔立ちは、まるで宗教画のような神々しさを放っている。