第14章 メイ探偵とゴースト
監視役の4人は、マツバさんの指示で噴水から距離を置いて身を潜めている。いつどこからなにが襲ってきても平気なように、それぞれ四方にばらけて中庭で待機しつつ、噴水を監視するという作戦だ。
夜の静けさに包まれた噴水は、まさに恋人たちの逢瀬にふさわしい雰囲気を醸し出している。
そんなムード満点の場所でNとふたりきりなんて、まるで本当にデートしてるみたいで、なんだか落ち着かない。
噴水のふちに腰掛けてからしばらくして、Nが真面目な顔で質問してきた。
「キミ、教えてほしい、コイビトとはどんなものなのか」
「そうだなぁ、口で説明するってなると難しいね」
「なら、コイビトの概念とは?」
恋人というと、つまりは恋愛感情ありきで成り立っている関係な訳だけど、この感覚をなんと伝えたらいいんだろう。
「恋人っていうのは、友達としての好きから、さらにドキドキが追加された仲……かなぁ」
「ドキドキか……トモダチに感じるラブはコイとは違うのかい?」
「そのラブは、考えただけで眠れなくなったりドキドキしたりする?」
「いや」
「じゃあちょっと違うかも。でもNってどこか達観してる感じがするから、恋を飛び越えて愛に目覚めてそう」
軽い冗談のつもりで言った言葉だった。
けれど、Nは悲しげに笑う。
「やはり、ゲーチスが言った通り、取り繕ってみたところで本質は変わらない。ボクは、ヒトの心を持たないバケモノなのかもしれない」
「前言撤回!」
突然の大声に、Nが目を丸くして固まった。
「ナナ?」
「ごめんN、軽はずみにあんなこと言って。Nは恋しないんじゃなくて、そういう相手に出会ったことがないだけかもよ?」
「なら、コイをした時のキミのココロについて聞かせてくれないか。知りたいんだ、コイとはどんなものなのか」