第14章 メイ探偵とゴースト
「だが、ボクにはわからないんだ。コイビトというものが…」
思い詰めながら視線を落とすNを見て、さすがのメイちゃんも申し訳なく思ったらしい。やんわりと矛先を変える。
「Nさんが困ってるので、ではグラジオさん——」
「フッ、断る」
グラジオくんは右手で顔を覆い、鼻で笑いながらメイちゃんの言葉を遮った。
「オレはナナを守ってやらないといけないからな」
「要するにやりたくない、ということですね」
ハルトくんの冷静なツッコミに、グラジオくんはそれ以上なにも言うことはなかった。
「ならハルトさん!」
「ぼくだと歳下の弟に見えちゃいますよ」
「むむっ、たしかに。では、禁断の恋という設定で……」
「いや…」
ふいに、表情に影を落としていたNが顔を上げた。その瞳は真剣そのものだ。
「ボクが引き受ける。ポケモンとヒトの架け橋になるためには、ヒトについても理解するべきだからね」
Nの覚悟を、メイちゃんが熱い眼差しで受け止める。
「Nさん!ありがとうございます!架け橋になって世界を切り開きましょう!」
随分と壮大なスケールの話になった。でも、あの流れだと、教師であるマツバさんによからぬ役を押し付けそうだったのでホッとした。
Nが覚悟を決めたのなら、私も羞恥心と恐怖心を乗り換えよう。
「ただのフリ、ただのフリ、なにもないしなにもおこらない、これは検証、ただの検証、いつわりの関係、嘘で塗り固めたふたり…」
「ナナさんが壊れかけてる」
ぶつぶつ唱えている私の顔を、ハルトくんが心配そうに覗き込んでうめく。すると、マツバさんが私とNの肩をぽんぽんした。
「よし、ふたりともすまないけど、これが最後だからよろしく頼むよ。じゃあみんな隠れようか」
こうして、最後の検証が始まった。