第14章 メイ探偵とゴースト
もし怨まれるとしたら、思い当たることはなにかないか考える。変な封印の釘を抜いたとか、祠を倒したとか?
——考えたけど、全くもって身に覚えがない。
「もしかしたら、同じ場所でもう一度ナナちゃんが検証をすれば、今度は尻尾を掴めるかもしれないね」
「わ、私!?また私が??」
自分の顔を指差してワタワタする私を見て、マツバさんは申し訳なさそうに笑った。
もうすっかり日は落ちて、窓の外は夜の闇に包まれている。そんな中、またひとりで図書館で検証なんて、考えただけで恐ろしい。
力なく椅子の背もたれに背中を預ける。緊張と恐怖で頭がクラクラしてきた。放心状態で天井を仰いでいると、Nが私の肩を優しく叩いた。
「怖いならボクがやるよ。トモダチの声なら聞けるから真意を確かめられるかもしれない」
「いや」と言ってマツバさんが会話に割って入る。
「怖がらせてすまないけど、ナナちゃんじゃないとおびき寄せられないと思うんだ」
「…私が、また、おとりに…」
虚ろな目でマツバさんを見つめる。すると、マツバさんがゆっくりと近づいてきた。絶望感に覆われた心に寄り添うように、あたたかな声音が降り注いだ。
「大丈夫。次はぼくも現場に行く。必ずキミを守ってみせる」
そう言って、タレ目がちな瞳をニッコリと細めたのだった。