第14章 メイ探偵とゴースト
「なぜこんなにナナが責められている?彼女は罰を受けるような悪いコトはなにもしていないのに」
「Nさん、これはそういうシチュエーションになりきっているだけですよ」
「どうして?」
「ズバリ、グリーンさんのハートに火がついたからです!」
生き生きとするメイちゃんとは対照的に、Nは冷静な面持ちで答える。
「なるほど。なら、嫌がる彼女を押さえつけて壁際に追いやり、あんなに顔がくっつきそうな距離になるほど至近距離で見つめ合うのは彼なりのラブってことかな?」
早口でこと細かく状況を分析するN。あのやり取りがリアルに蘇って、いよいよ心臓が痛くなってきた。唯一、この一連の出来事の良かった点をあげるとするならば、羞恥心が心霊現象に対する恐怖を和らげてくれていることだろうか。
「はい!ラブゆえのふたりだけの世界ってことです!」
「そうなのか…またひとつ世界が開けたよ」
Nが変な世界の扉を開いてしまった。
「…どうすればみんなの記憶を消せるかな」
「いじけるな。こんな日もあるさ」
顔を両手で覆ってぼやく私の隣で、グラジオくんが声をかけてくる。恐る恐る顔から手を離すと、「しっかりしろ」とそっと励ましてくれた。
いつまでも現実逃避してる場合じゃない。
深く息を吸い込んでから背筋を正す。気持ちを整え、再び会議の空気の中へ身を置いた。
やがて、じっと顎に手を添えたまま沈黙していたマツバさんが、静かに口を開く。
「ちょっと巻き戻してもらっていいかな?」
「どの台詞……じゃなくて、何分くらいですか?」
メイちゃん、絶対ワザと間違えてるよね?
「『お前の理性をな』からお願いするよ」
イケボでマツバさんが淡々と恥ずかしい台詞を再現すると、メイちゃんが頬を赤らめながら力強く頷いた。