第14章 メイ探偵とゴースト
静まり返る室内、私とグリーンの声がスピーカーから流れる。
『先生の言いつけを守らない生徒はおしおきが必要だよな」
『ふ、風紀が乱れる!』
『乱す原因はお前だろ?』
『人が見てるから、ストップ!』
『だから誰もいないって』
変な汗が出てきた。
周囲を盗み見ると、みんな真剣な表情で食い入るように画面を凝視している。
『だ、め…離して!』
『ずいぶん必死だな?依頼は口実で誰かと待ち合わせでもしてんじゃねーか?』
『だから信じて!ほんとに検証中なのっ!』
『オレが検証してやるよ。お前の理性をな』
『そんなのいい、しなくていい!ねぇ!そこにロトムがいてみんなに中継——って、グリーン!うしろっ!!』
画面の中の私は、怯えた表情で空中を浮遊する本を指さしている。グラジオくんの言う通り、私たち以外には人もポケモンもいないように見える。
その後、グリーンが飛んできた1冊を掴んだのを合図に、何冊もの本が羽ばたきながら私たちを襲っている。
『きゃあぁぁあ!!』
『どうなってんだ!?』
ふたりの叫び声を聞きつけて、グラジオくんが助けに来てくれたところでメイちゃんは画面を静止した。
「……おわかりいただけたでしょうか?」
ナレーションのような口調でメイちゃんが囁く。
私は、誰の顔も見ることができずに俯いた。
もう無理だ。この録画を画面ごとかち割ってなかったことにしたい。本に挟まって、しおりになって、ディグダの穴に埋まりたい。
「こ、これは…」
震える声で、ハルトくん。
「おびき寄せるために、ワザとこんな恥ずかしいやり取りを?」
「いえ、こちらは天然ものです」
「わぁお」
顔を、上げられない。
「セイト、オシオキ…?」
今度はNが恥ずかしいワードを羅列し始めた。