第14章 メイ探偵とゴースト
「まず起きたことを整理しましょう!」
張り切った声が部室に響き渡る。声の主はホワイトボードにきゅきゅっとマーカーを滑らせた。
・2ーB
Nさん ハルトさん
・図書館
ナナさん グラジオさん グリーンさん(乱入)
・中庭
被害者2名 アカデミー生徒男女
「乱入…」
思わず気になった単語をボソリと呟く。けれどメイちゃんは気にする素振りも見せず、トン、とボードでマーカーをついて顔だけこちらに振り返った。
「Nさんたちは今回なにも起きなかったわけですが、気になることとかありましたか?気配を感じたとか物音がしたとか」
メイちゃんはすぐ声に応じられるよう、マーカーをボードに乗せたまま返答を待つ。
「ボクは気配も感じなかったし、トモダチの声も聞こえなかった」
「ボクも教室のドア、廊下を見張っていたけどそれらしき影もなかったです」
「ではNさんチームは本当になんにもなかった…と」
Nとハルトくんの名前の下に「異常なし」と書き加えられた。
メイちゃんがこちらへ目配せすると、グラジオくんが話し始める。
「図書館は、本が浮いてナナたちを襲っていた。だが、扉付近には誰も来なかった。ゴーストポケモンの姿も見当たらなかった」
「ふむふむ…検証のため、問題のシーンを見てみましょう」
「いや、その必要は…」
「ぜひ見たいです!」
デスクに両手をついて、ハルトくんが目を輝かせる。知的好奇心に溢れた探究者の瞳だ。
「メイ、ボクも興味がある」
「はい!みんなで見ましょう!」
現場にいなかったハルトくんとNはノリノリだ。メイちゃんはニッコニコでモニターをみんなが見える位置に移動した。
「あの、メイちゃん、音声は必要ないよね?」
「いえ、もしかしたら犯人の声も入っているかもしれないので!」
「そんなはっきり撮れたんですね?楽しみだなぁ!」
ハルトくんの純粋さが私の精神にダメージを与える。
「はい!ばっちり撮れてますからね!」
鼻息を荒げたメイちゃんは、例のシーンまで早送りして再生した。