第14章 メイ探偵とゴースト
「そうだね、たくさん喧嘩してたくさん話し合えばいいんだ」
「喧嘩しろとは言ってないが」
真面目に返すグラジオくんを見て、自然と笑みがこぼれる。
「冗談で言ったの。話聞いてくれてありがと」
「オレも話せてよかった」
グラジオくんは、繕った箇所の布地をそっと伸ばして確かめてから、針を引き抜き小さなハサミで糸を切ると、内側でしっかりと結んでくれた。すっかりほつれが目立たなくなった袖を見て満足げに笑う。
「ほら、できたぞ」
「すごいね!全然目立たなくなった!ありがとう!」
感謝をありったけ伝えると、グラジオくんは「大袈裟だ」と呆れたように言いつつ、どこか安心したように息をついた。
たくさん話を聞いてもらって、服だけじゃなく、心のわだかまりまで繕ってもらった心地だ。笑顔がどことなくリーリエちゃんに似ていて、なんだか胸がポカポカしてきた。ますますルザミーネ一家のファンになってしまいそうだ。
縫い目を指先で撫でる。きっと、この服を着るたびに、私はグラジオくんと話したことを思い出すんだろう。
「——にしても遅いな」
図書館の扉を見やり、グラジオくんが呟く。
「そうだね。とっくに来てもおかしくないのに」
「呼びに行くか」
そう言って、彼が立ち上がった時だった——バタバタと廊下を走る音が近づいてくる。
「ナナ!グラジオ!」
足音の正体は、Nとハルトくんだった。図書館の扉を開いたふたりは、私たちの安否を確認すると、強張らせていた表情を緩ませる。
「遅くなってごめんなさい!今、校内に残っていた生徒にまた被害があって、メイさんたちはそっちに向かったんです」
「そうだったの!?全然声気づかなかった」
「図書館と真反対の棟だったから無理もない。ボクらは先にナナたちと合流するようマツバさんに言われてきたんだ。ふたりが無事でよかった」
その後、4人でオカ研の部室で待機していると、すぐにメイちゃんたちも戻ってきた。
ひとまず、検証結果の報告と、つい先ほど被害に遭った生徒の証言を元に、集まったメンバーで話し合うことになった。