第14章 メイ探偵とゴースト
「ところでメイちゃん」
「はい!なんでしょう?」
「撮れたって言ってたけど、本に襲われる前の図書館の様子って、もしかして……」
恐る恐る尋ねると、メイちゃんが少女漫画のように瞳をきらめかせた。両頬に手を添えて、夢見る少女のようにうっとりとした表情で、
「ドラマみたいでした」
「止めてほしかったな?」
「ごめんよナナちゃん、未来ある若者の青春を大人が奪って良いものか迷ってしまって」
「マツバさんも、そこは教師として止めてください!」
「オレも、あんたたちが盛り上がってたから、邪魔しては悪いかと一瞬躊躇してしまった」
「そんなに震える左手を抑えて自分を責めないでグラジオくん」
みんなの反応を見るに、私たちの先ほどのやり取りはすべて見られていたらしい。恥ずかしすぎて顔がダルマッカだ。
「あー…検証ってほんとだったんだな」
気まずそうにグリーンが頬をかいている。
「言ってたでしょ!ずっと!」
目の前で起きた恐怖体験を凌駕する圧倒的羞恥心。そして、そこから湧き起こるグリーンへの怒りを瞳に宿してめいっぱいにらみつける。
グリーンは髪をかき上げ、その場を取り繕うようにキザに笑って見せた。
「つい話し込んじまったな。邪魔して悪かった」
「全然反省してないでしょ?」
「じゃ、調査がんばれよ!バイビー」
「バイビーでごまかさないで!」
グリーンはくるりと背中を向けると、人差し指と中指を揃えて立て、いつもの調子で挨拶をしながら帰ってしまった。
「逃げた…」
残った私にぜんぶ押し付けて。