第14章 メイ探偵とゴースト
「オレ様の言いつけを守らない生徒はおしおきが必要だよな?」
グリーンの変なスイッチが入ってしまった。今にもキスされそうな距離で見つめてくる。
「ふ、風紀が乱れる!」
「乱す原因はお前だろ?」
脚の間に膝を押し込まれ、身動きが取れなくなる。
「人が見てるから、ストップ!」
「だから誰もいないって」
「いる!いるんだってば!」
顎クイされながら吐息混じりの声で誘惑されれば、嫌でもその色気に惹きつけられてしまう。腕の下からすり抜けようとすると腰を引き寄せられた。
「だ、め…離して!」
必死に抵抗して両手で胸元を押す。けれど、グリーンはびくともしない。
「ずいぶん必死だな?やっぱ依頼は口実で、誰かと待ち合わせでもしてんじゃねーか?」
さっきから真実しか告げていないのにまったく信じてくれない。
「おねがいっ、信じて!ほんとに検証中なのっ!」
「オレが検証してやるよ。お前の理性をな」
「なにいってんの!そんなのいい、しなくていい!ねぇ!そこにロトムがいてみんなに中継——」
キスされる寸前——不意に、グリーンの背後に黒い影が浮かび上がるのが見えた。
「グリーン!うしろっ!!」
顔を引き攣らせながら震える指を影へと向ける。
「は?」
グリーンは振り向きざま、後頭部めがけて飛んできたなにかを片手でキャッチした。
「なんだ?」
掴んだのは1冊の辞書だった。
固まる私たちの目の前で、本棚から次々に本が飛び出す。蝶のように羽ばたいたかと思うと、一斉に襲いかかってきた。
「きゃあぁぁあ!!」
「どうなってんだ!?」
グリーンは私を庇うように抱き寄せ、背中で本の攻撃を受け止めた。