第14章 メイ探偵とゴースト
「なら、グラジオくん交換しない?」
「フッ、自分の弱さに向き合うことも時には必要だ。守ってやるから、安心して検証に集中しな」
どうやら変わる気はないようだ。
「でも、だって、私ね、申し訳ないけどおばけとか本当に苦手で…!」
不安で声が震える。
広くて音のない空間にひとりぼっち。しかも自ら恐怖体験に片足を突っ込んでるこの状況で、平常心なんて保てるわけがない。
「あの、グラジオくん、聞いてる?そこにいるよね!?」
怖くて話していないと気が狂いそうだ。
「もしなにかあったら、ちゃんとおばけ捕まえてくれるんだよね?」
迷惑なのもおかまいなしに、必死に話しかけ続ける。
「おーい、いるよね?グラジオくん!」
執拗に声をかけているとようやく返事がした。
「シッ、誰か来た」
「ええっ!?」
「オレは気配を消すからあとはまかせた」
「待って!グラジオくん、こ、心の準備がっ…!」
グラジオくんの返事が急に途絶える。すると、彼の言う通り、なにかの影が扉のガラス越しに近づいてくるのが見えた。
扉がゆっくりと開かれる。
「……ッ!」
思わず両手で口を塞ぎ、急いで背を向けた。
きっと、あの影がなにか悪さしようとしたら、グラジオくんが現行犯逮捕してくれるはず。やっつけてくれるはず。ならば気がつかないふりをしないと!
(私はおとり、逃げちゃダメ、がまん、がまんだ私!)
震える背中を影に向けて立っていると、
「……ナナ?」