第14章 メイ探偵とゴースト
「じゃあ、霊のいやな気配を感じたことは?」
「うーーん、ないですね」
「なら雰囲気は?たとえば町を歩いていて、この町は好きとか落ち着くとか」
この質問が、どうおばけと関係があるんだろう?と思いながらも答える。
「雰囲気の好き嫌いはありますね。古い街並みでも歴史や文化を感じるところは好きです。でも、手入れされていないような庭や廃墟は、不気味で近寄りたくないですし」
私の回答に、マツバさんはうんうんと相槌を打った。
「そう、霊は空気が澱んだ場所や廃墟、そして事故があった場所に引き寄せられる。そしてゴーストタイプのポケモンもそういう場所を好んでよく出没するんだ。けれど、ぼくが調べた限り、パシオアカデミーはそういういわくつきの建物じゃないし、悪い気配も感じなかった。土地だって澄んでいる。その証拠に、一晩泊まったけどなにも起こらなかったんだ」
「では、この学校は、本来ならおばけやゴーストポケモンが自然発生するような場所ではない、ということですか?」
「そういうことになるね」
「ならやはり、人が関与しているかもしれませんね。あと、一晩泊まってなにもなかったなら、夜よりも日中の方が出やすいとか?」
私の言葉に被せるように、グラジオくんが意見を述べる。
「というより、“人がいる時間”といった方がわかりやすいんじゃないか?そうだろ、先生」
「うん、といっても、早朝や授業がある時間帯には現れないから、人が多すぎず少なすぎない放課後を狙って出るんじゃないかと思っている」
「ははぁ…なるほどなるほど」
意見が飛び交う中、メイちゃんは探偵のように顎に手を添え、目を細めた。
「犯人が現れた瞬間を押さえることができれば、ぼくもいろいろわかるんだけど、気配もなければ出てもこないから手の打ちようがなくてね」
マツバさんが眉をひそめてそうこぼすと、メイちゃんの瞳にひらめきが走った。
「いいこと思いつきました!」
みんなの視線が、立ち上がったメイちゃんに集中する。
「マツバさんだと、もしかしたら警戒して出てこないのかもしれません!それなら……出てくるようこちらから仕向けるんです!!」
このときのメイちゃんの不敵な笑みを、私はこの先一生忘れないだろう。