第14章 メイ探偵とゴースト
「では、これまでに校内で起きた話を聞かせてもらえますか?」
Nの声にハッとして意識を依頼へと戻す。
「はい!ボクから説明しますね」
ハルトくんはパシオアカデミーの地図をテーブルに広げた。地図にはところどころ赤や青で日付やメモが書き込まれている。
「まずはじめに被害があったのはこの教室です」
トン、とペン先で地図上のとある教室を示す。
「忘れ物を取りに帰った生徒が、突然背後から何者かに肩を叩かれたそうです。振り返っても誰もいなくて、前を向いたら忘れ物が消えていたみたいで」
ハルトくんは地図に書き込まれた日付順に説明を続ける。
「次は図書館。図書委員が本棚の整頓をしていたら、たくさんの本が浮かんで襲ってきたそうです。幸いケガはなかったけど、被害が出てもおかしくない状況でした」
その他にもいくつかの事例や目撃談をハルトくんが説明してくれたけれど、どれも情報はあやふやで核心をつけないものばかりだった。
「次はぼくの検証結果についても話すよ」
マツバさんが指を組んで真面目な顔つきになる。
「はじめは噂止まりだったけど、直接生徒から相談があったから、ぼくの能力を使って検証を試みたんだ」
「マツバさんの能力とは?」
そう質問すると、マツバさんは修験者で、厳しい修行を経て見えざるものが見える体質になったと話してくれた。幽霊やひとだまが見えたり、気配を察知することができるらしい。
その力を使って真相を突き止めようと、夜の学校にひとりで残ったそうだ。
夜の学校にひとり……私には絶対に無理だ。
「……そ、それで、ゴーストポケモンとか幽霊は現れたんですか?」
「いいや、なにも見えなかった」
予想外の回答だった。
「見えなかったってことは、つまりなにも出なかったってことですか?」
マツバさんは腕を組み、少し考え込んでから頷いた。
「ナナちゃんは霊が見えたことあるかい?」
首を振って今の今まで一度もないと伝える。