第14章 メイ探偵とゴースト
ゴーストとかオカルトとか、どうしてこうも苦手なものばかりに直面するんだろう。神様が「おくびょうを克服しろ」って試練を与えているのだろうか。
「ようこそ!クラベル校長から話は聞いてるよ」
オカルト研究部の部室には、マツバさんと部長のハルトくんがいた。
マツバさんはジョウトの伝統的な着物姿で出迎えてくれた。なんでも、ジョウト文化に興味を持ってもらえるよう、着物姿で教壇に立っているそうだ。
エンジュジムのジムリーダーでゴーストタイプを専門とするマツバさん。アカデミーではゴーストポケモンのことだけでなく、ジョウトの文化や神話も専門で教えているらしい。
「驚いたな。Nくんも協力してくれるなんて」
「ナナと一緒にヒナギク博士の手伝いをしてるんです」
「そういえばWPMもふたりは同じチームだったね。大会の目覚ましい活躍を見て応援していたんだ。こうして話す機会ができて光栄だよ」
聞くと、マツバさんはシルバーくんと同じくホウオウをバディーズにしているそうだ。しかも伝説ポケモンの色違いというレア中のレア。今日はジョウト神話の授業でホウオウの伝説に触れ、2匹のホウオウを生徒たちに見せるためにシルバーくんを呼んでいたらしい。
「シルバーさんも誘ったんですが帰っちゃいました」
「疲れてたんじゃないかな。遅くまで授業に付き合わせちゃったからね」
マツバさんは申し訳なさそうに肩をすくめた。
シルバーくんのことだ。疲れていても女の子を放っておけなくて面倒を見ていたんだろう。
言葉や態度は冷たく見えても、本質は優しい人だから。
(ほんとは、もっとシルバーくんと話したかったんだけどな…)
夏祭り以降、シルバーくんは私との接触をあからさまに避けるようになった。本戦後はすぐ帰ってしまうし、チームの特訓もNがいないと絶対に参加しない。
せっかく久々に試合以外で会えたのに、さっきもろくな会話ができなかった。
いがみ合いじゃなく、もっといろんな話をしたかった。マツバさんの授業の話とか、パシオアカデミーのこととか。
最近仲良くなれたと思ってたのに、これじゃあまた“ただの知り合い”に逆戻りだ。
行き場のない気持ちを落ち着かせたくて、リュックの肩ひもをぎゅっと握り締めた。