第14章 メイ探偵とゴースト
「はい……それは調べないとですよね…」
空返事で塞ぎ込む私の隣で、Nは顎に手を添えて思案する。
「なるほど。これはあくまでも思いつきですが、もしかしたらバディストーンはポケモンの能力を引き出すだけでなく、なにか——たとえば、一時的に興奮させる作用があるとか、石の力が引力となって、本来野生のポケモンがいないパシオに引きつけられて集まってしまうなど、いまだに解明されていないさまざまな要因があるかもしれない。それを、アカデミーの調査ついでに研究材料として残せるかもしれないというわけですね」
「この数分でその仮説まで行き着いたの!?」
早口でぽんぽんと考えを述べるNはまるで学者のようだ。
「すばらしい!あなたはとても博識な方ですね」
思わずクラベル校長とふたりでNに拍手を送る。
「Nさん、あなたにはぜひこのアカデミーの先生になっていただきたい」
「そう言ってもらえてウレシイです。けど、どちらかというとボクは生徒になりたい」
「ほう、その理由は?」
「子どもの頃ひとりで教育を受けたので、トモダチと学ぶというのはどんなものなのか知りたいんです」
Nの生い立ちを知る私は、その話を聞くだけで胸の奥がちょっぴりツンとした。
「なら、せっかくだから、調査しながら学校も見学させてもらおう?」
「イイね!とても楽しそうだ」
嬉しそうな笑顔を見てしまえば、調査を断るという選択肢は必然的に消去される。
いいんだ、Nが少しでもパシオで楽しく過ごせるなら。胸中でそう自分に言い聞かせ、恐怖心を押さえ込んだ。