第13章 帽子のトレーナー
レッドコーチの特訓は、日が傾き空がオレンジ色に染まる頃まで続いた。
グリーンは主にわざの構成や戦略に重点を置くのに対し、レッドはまずこちらの力を全力でぶつけさせ、そこから鍛え上げるという実践的なスタイルだった。
この間、グリーンが「3人で教え方を競い合った」と言っていたのを思い出す。たしかに、レッドとグリーンの教え方はまるで違っていて新鮮だった。
だけど、実は密かにグリーンの戦略でレッドに挑みたいという思いがあった。レッドは相手の戦い方を否定しない。だから私もありのまま等身大の実力をぶつけられたし、レッドは何度も真正面から全力をぶつけ返してくれたのだった。
「今日はありがとうレッド!」
レッドは嬉しそうに頷く。
「またいつでもって?うーん、まるで歯が立たなかったから、もうちょい修行積んでからまたお願いするね」
「…うん!」
その時までに、火力と耐久力を鍛えないとなぁと、なんとなくトレーニングメニューを考えていると、グリーンからチャットがきた。
『これから会えるか? 飯食おうぜ』
ちょうど疲れてお腹ぺこぺこだったからナイスなお誘いだ。
『食べる!』
『今どこにいる?』
『セントラルシティ北の原っぱ』
『ひとりじゃないよな?』
また心配してる。けど、今日は心強いレッドがいるから平気だろう。
『レッドに特訓してもらってた』
『リーフはいるのか?』
首を振るサンダースのスタンプを返す。
『おい』
『なんで誘ってくんないんだよ』
『オレ様を差し置いてふたりで楽しむな』
ぽんぽんチャットが送られてきた。拗ねてるのが伝わってくる。
『ライヤーさんとレッドの勝負の立会人になったついでに特訓してもらってた 次はみんなで!』
ちょっと言い訳っぽかったかな?と思ったら、オコリザルのスタンプが返ってきた。こんなあからさまに拗ねてるのは珍しいかもしれない。
「…?」
レッドが「帰らないの?」と目で伝えてきた。