第13章 帽子のトレーナー
「オレ様は今回のWPMは出場せず運営にまわる。ロケット団がまた悪さをしないよう、警備を強化しなければならないからな」
「…!」
「ロケット団」というキーワードに、レッドは表情を厳しくした。
「パシオはオレ様が守る。だからレッド、ナナ、お前たちは全力で大会に挑め!世界を揺るがすほどの熱いポケモン勝負を期待しているぞ!」
チラリと横顔を向けたライヤーさんは笑顔だった。
「そして、チャンピオンにオレ様は勝負を挑む!勝つのはもちろんこのライヤー様だ!つまり、大会に参加せずともスマートに世界最強をかっさらう!そういう計画なのだ!ハーッハッハッハ!!」
派手な捨て台詞を残し、ライヤーさんは颯爽と去って行った。フーパは愉快そうに空を自由に飛び回りながら、その背中を追いかけていく。
ポツンと残されたふたり。
賑やかなライヤーさんがいなくなると、草原は途端に静けさを取り戻す。
けれど、それとは裏腹に、胸の奥に芽生えた静かな炎が私の何かを呼び起こす。
怖いとか、自信がないとか、今はもうどうだっていい。
脳裏に刻まれたレッドとライヤーさんのポケモン勝負が、そっと私の背中を押す。
「ねぇ、レッド」
自分からレッドにこんなお願いをする日が来るなんて思いもしなかった。
「私も…戦いたい!私とポケモン勝負して!」
あんな勝負を私もしてみたい。幼馴染ではなく、いちトレーナーとしてレッドに挑みたい。
レッドは一瞬目を見張り、それからゆっくりと頷いた。
気合い十分で挑んだものの、勝負はあっけなく終わった。けれど、試合の振り返りも兼ねて、そのまま特訓をつけてもらえることになった。