第13章 帽子のトレーナー
「あはは…落ち込んでるかと思ったけど、元気ならよかった」
ゴース大量発生のショックが胸に残ったまま力なく笑う。フーパはライヤーさんに叱られてもまるで気にしていない。
聞くと、フーパは空間を自在に繋げていろんなものを移動させることができるらしい。フーパの能力でパシオに連れてこられた人もいると聞いたから驚いた。
「フーパよ、このナナは特におくびょうで泣き虫とグリーンから聞いている。いたずらも度が過ぎれば笑えないぞ。つぎナナを驚かす時は事前にオレ様と打ち合わせしてからにしろ」
「いえ、できれば打ち合わせではなく阻止してください」
グリーン、一体私をどんな風にみんなに紹介しているんだろう。気になるけど、知ったら知ったで虚しくなりそうだ。
ライヤーさんの説得で、ようやくフーパがゴースを元の場所に帰すと、レッドが私の肩から手を離した。言葉はなくとも、怖がる私をずっと庇ってくれていたみたいだ。
ライヤーさんは腕を組んで深々と嘆息する。
「すまないな。普段からいたずら好きで手を焼いているのだ」
「ふふっ、大丈夫です。でも次のいたずらはもう少しお手柔らかにね、フーパちゃん」
フーパは少し嬉しそうに身体を揺らした。そんなフーパを優しげな表情で見つめながら、ライヤーさんが口を開く。
「…ナナ、今日はオレ様の用事に長時間付き合わせてしまったな。礼を言っておく」
「いえ、たくさんライヤーさんと話せて楽しかったです!こちらこそありがとうございました」
「あと、貴様もだ、レッドよ」
レッドは少し驚いたように顔を上げた。
「貴様には負けが続いているが、大事なことも気づかせてもらった」
「…うん」
まっすぐな瞳で頷くレッド。一方で、ライヤーさんは照れ隠しなのかくるりと背中を向けた。