第13章 帽子のトレーナー
「ライヤーさんがお話している時にちょうどレッドが向こうから歩いてきたんですよ。こういうのを『縁がある』って言うんですね」
「ああ、話題に出した相手が偶然この道を通るなんて滅多にない確率だよ。ライヤーの強い思いが彼に届いたみたいだね」
「今日はいろんな思いが届くラッキーデーだね!」
「スバラシイ!まさにラブの連鎖反応!」
レッドは私たちの会話を聞いて首を傾げている。
「ラッキーとかラブとか訳わからんことを言うな!!」
ライヤーさんが私たちの会話を遮るように街中に声を響かせる。無自覚だろうけど、よく通る声だ。やはり王族たるもの、声だけで人の注目を集めてしまうらしい。
何事かと立ち止まる人々を見て、ライヤーさんは声のトーンを落とした。
「場所を変える。ナナ、貴様には勝負の立会人になってもらう」
「えっ」
返事をする前に、ライヤーさんが私の腕を掴んだ。
Nはどうするのか聞くと、この後トウヤくん、トウコちゃんと会う約束をしているからセントラルシティに残るらしい。
「…!」
レッドが「おいで」と言っている気がする。
「彼もナナに来てほしいみたいだ」
「Nもレッドの心の声、聞こえるの?」
「なんとなくね」
借りていた帽子をそっと手渡すと、Nは口元に笑みをたたえて帽子を被った。