第13章 帽子のトレーナー
「帽子を見ると、貴様の幼馴染であるレッドの顔が嫌でも目に浮かぶのだ!オレ様の国にふらっと現れ、無敗だったオレ様にあっさりと勝ち、何も言わずに去って行った、あのにっくきレッドの顔がな!」
「レッドとライヤーさん、そんなことがあったんだ…」
そういう事情があるのなら、ライヤーさんにとって帽子は、トラウマを思い起こすアイテムになってしまっているのかもしれない。
「WPMだって、元はと言えばレッドへのリベンジとして開いたのだ!しかし結果はレッドがチャンピオン!だがもうそんなことはどうだっていい!いろいろあって王の器たるオレ様は進化したのだ!」
ライヤーさんは人差し指を折りたたみ、拳を作って握り締める。
「プライドだなんだを捨て、もう一度レッドと1対1でポケモン勝負をしたい!だが神出鬼没なレッドは伝説のポケモンのように滅多に姿を現さない!そこで、幼馴染である貴様にレッドを呼んでほしいというわけだ!」
「…だってさ。どうするレッド?」
「…!」
「今からいいよって言ってます」
「なにぃっ!?」
よほど驚いたのか、突然のことに狼狽えたライヤーさんのサングラスがずり落ち、一瞬目元が見えた。
背中を向け、慌ててサングラスを戻してからこちらへと向き直る。
「き、貴ッ様ぁぁあ!話には出したが急に現れろとは言ってないぞ!心の準備というものがあるだろうがッ!」
「?」
そりゃあ急に怒られたら「?」だよね、と胸中で呟く。