第13章 帽子のトレーナー
「移動式遊園地とあわせてマラサダの件も進めるとしよう。楽しみに待っているがいい!」
「ナナ!観覧車がパシオに来たら一緒に乗ろう!」
ワクワクが抑えきれないといった様子で、Nが嬉しそうに誘ってきた。一瞬ドキリとしたけれど、ピュアなNは純粋に乗りたいという理由から私に声をかけたのだろう。
「うん、私でよければ!」
「もちろん、キミがいいから誘ったんだ」
「眩し…ッ」
「眩しい?ならこれを貸すよ」
ぽふ、と頭にNの帽子が被せられる。
「いやあの、Nの笑顔と台詞が眩しいって意味」
「ボクが眩しい…?どういう意味かな?」
「そのまんまだけども…」
「ええい!オレ様を差し置いてふたりで盛り上がるな!」
私としたことが。ライヤーさんがいるのに、Nの眩しさにやられてしまっていた。
ライヤーさんは少し気まずそうにコホンと小さく咳払いすると、私に向き直る。
「……ナナ、貴様を呼び止めたのはだな、もうひとつ聞きたいことがあったからなのだ」
「聞きたいことというのは?」
ぶかぶかなNの帽子のツバを上げ、赤いサングラスの向こうにあるであろうライヤーさんの目を見つめた。
「貴様には、その、幼馴染がいるだろう……ええいっ!なんだその忌々しい帽子は!急に見た目が変わると話しにくいではないか!」
「忌々しいですかこれ?シンプルなデザインで私はいいと思いますけど」
「ライヤーは帽子が嫌いなのかな?確かにその髪型では被るのも困難だろう。よければライヤーに似合う帽子を探す手伝いをするよ。複雑な数式ほどワクワクするからね」
「そういうことではないッ!貴様ら、このオレ様をおちょくってんのかッ!!」
怒りを抑えきれないといった様子で、ライヤーさんは地団駄を踏んだ。
ぜえぜえと息を荒げ、ようやく落ち着きを取り戻すと、びしっと帽子を指差した。