第13章 帽子のトレーナー
パシオに来てからの日々はまるで非日常。刺激にあふれていて、気づけばあっという間に時が過ぎていく。
世界規模の大会であるWPM、定期的に開催されるイベントや催し物、トレーナーズサロンに、バトルタワーやパシオアカデミー。楽しいだけではなく、トレーナー同士の交流や成長の場でもあり、まさにポケモントレーナーを志す者にとっては特別な島だ。
観光地としても人気が高く、常に人々で賑わうこの場所に、物足りなさを感じたことは一度もない。
庶民の意見を聞きたいと言われたけど、むしろ発想力がなくて申し訳なくなる。
「観覧車に乗りたいな」
私が頭を悩ませている横で、ポツリとNが呟いた。
「なるほど、遊園地!ジェットコースター以外なら私も乗りたいです!」
「遊園地か。ううむ、悪くはない発想だが、パシオがテーマパークになってしまうな」
突拍子もない要望でも、ライヤーさんは腕を組みながら顔をしかめて真剣に思案に耽る。
「いや、まてよ…ふぅむ」
頭を傾けたり首を振ったり、脳内で自問自答を繰り返しながら、何かを閃いたように顔を上げた。
「そうだな……移動式遊園地を呼んで期間限定のイベントにするのはアリだな!」
「そんなことできるんですか?」
「当然だ。オレ様に不可能は無いのだ!ハーッハッハッハ!」
高らかに笑い声を響かせると、ごきげんな様子でパチンと指を鳴らした。
「貴様らの意見、参考にしよう!」
「やったぁ!よかったね、N」
「ああ、とても楽しみだ。アリガトウ!ライヤー」
遊園地まであったら、世界中の娯楽を凝縮したまさしく「夢の島」だ。