第12章 ※熱帯夜
「あのねグリーン」
「ん?」
「いろんな人に出会って思ったんだ。強くなる理由、追いかけてる夢はみんな違うけど、みんな大切な何かのためにポケモンといるんだなって」
シルバーくんやNをはじめ、この島で出会ったたくさんの人たちの顔を思い浮かべる。みんなそれぞれ強い信念や情熱を持っていて、その思いに触れるたびに背中を押されるような気持ちになった。
それまでは3人に追いつきたくて焦っていたけど、今は少し違う。仲間と一緒に自分がどれだけがんばれるのか試したい、自分にできることをみつけたい、そう思うようになった。それは、今までのひとり旅では得られない経験だった。
「ポケモン勝負って不思議だよね。個性というか、その人の性格が出るなぁって」
グリーンは浴槽に腕を預け、水滴が滴る天井を仰いだ。
「そうだな……オレとレッド、そしてリーフは同時にマサラタウンを旅立った。始まりは同じでも、歩んできた道はみんな違うんだ。当時のオレは、ポケモン図鑑は強くなるためのツールとしか思ってなかったけど、リーフなんかは楽しんでたみたいだしな」
天井を見上げたまま、「そういえば」と呟いて続ける。
「お前がパシオに来る前、あいつらとトレーナーの育成で競い合ったことがあってさ、笑っちまうくらい全員育成スタイルがバラバラだったんだ」
指導したトレーナーを戦わせたら、レッドのチームが勝ったらしい。グリーンは笑ってはいるけど、どこかやるせなさそうに肩をすくませた。
「参っちまうよな。こっちはカントートップのジムリーダーやってんだぜ?」
「レッドコーチ、優しいようで厳しそうだもんね」
相手に敬意を表して、レベル5のコラッタ相手にレベル99のリザードンで全力のかえんほうしゃをぶちかましてそうなイメージだ。
「お前の言う通り、育て方、戦い方で個性って出るよな。一緒にいるポケモンも、使う技も作戦も全部違う。おもしれえよな、トレーナーの人生が勝負に表れるなんてよ」