第12章 ※熱帯夜
襟を乱暴に開けば、下着に包まれた胸が空気に触れる。乱れた浴衣から見える白い素肌に息を呑んだ。
「や、だ…っ」
抵抗して軋むベッド。なにか無いかと浴衣をまさぐれば、着付けで使っている紐を見つけた。拒絶を無視して、ナナの両手を頭の上で縛り上げる。
これでもう逃げられない。
挑発的な笑みを向けながら、汗でしっとりと湿った胸元にキスを降らせる。下着をずらして胸に手を滑らせると、胸が弱いナナは手で包み込むだけで呼吸をより一層熱くした。
汗の味すら甘く感じるのはフェロモンなのかなんなのか。甘い蜜でも分泌されてるんじゃないかと思いながら、首筋に吸い付く。
顔を横に向けさせて、首筋から耳の付け根に向かい舌でなぞる。耳の後ろに到達したところで、壊れないようにかんざしと羽根をそっと外してベッド脇に置いた。
あいつの想いが込められた鮮やかな羽根。視界に映るだけでなんでこんなに胸がざわつく?
こんなのは全然オレらしくない。
じんわりと汗ばむうなじにそっとキスを落とす。オレだけが知るナナの弱点。
「…ぁ、や…んっ」
背中を仰け反らせて逃げようとするから跡がつくぐらい噛みついた。ナナの肌が粟立つ。
血も汗も涙も、ナナのすべてをオレのものにできればいいのに。
「…っ、いたい…」
ナナは、涙目になりながら苦悶の表情を浮かべて肩を震わせた。抵抗する華奢な身体を抱き寄せて捕まえる。触れ合えば、互いの汗が滲んで混ざり合う。
「ねぇ、浴衣…汗で汚しちゃう…っ」
こんな時ですら借りた浴衣が気になるらしい。
祭りの時もそうだった。周りばかりを気にかけるのが悪いとは言わねーけど、そんなんじゃ快楽に没頭できないだろ?
もっと自分勝手になって、狂って、何もかもオレに委ねればいいのに。
何度身体を重ねても、簡単には理性を崩さない。
そんなナナであれば、シルバーとも一線を超えてはいない?
いや、こいつはおくびょうな癖に妙にすなおだから油断はできない。相手が夢中になって、我慢の限界を迎えて手を出すパターンだ。
考えながら、「それはオレじゃん」と心の中で呟く。