第11章 お祭り騒動
「誰のこと探してんだよ?」
「べつに誰も…」
小さな嘘が、胸の奥に小さな後ろめたさを残す。
隣のレッドはこちらのやり取りに気づいていないようで、ニコニコしながら夜空を見上げている。
一方でリーフちゃんは、見てはいけないものを見るような目つきで私たちのやり取りを探っている。目が合うと、勢いよく花火に視線を戻した。
「あの、リーフちゃんがこっちを気にしてるから離れた方がいいかも」
「いいんだよ、見せつけておけば」
「い、いやだっ、ファンに刺される」
「ハハハッ!」
突然耳元で笑い声をあげるから、驚いて肩がビクついた。
肩にかけられた手を引き剥がす。
「ねぇ、花火に集中!」
「ナナもな」
視線を空へと戻すと、さまざまなモンスターボールを模した大小の花火が打ち上げられたところだった。その後にポケモンの姿が浮かび上がる。まるでボールからポケモンが飛び出したような演出だ。
ドローンと花火で創り上げられた幻想的な光景に人々は釘付けになる。
「みて!ヒトカゲ、フシギダネ、ゼニガメ……3人のポケモン!」
「つぎはイーブイか」
イーブイの花火の後、進化後の8種類が順々に登場する。サンダースが出てきた瞬間、足元に座るサンダースと一緒にはしゃぎながら声を上げた。
「かわいいーッ」
「わかったから落ち着けって」
「アハハッ!」
横のレッドが笑っている。
「ごめんねレッド、うるさくして」
「お前がはしゃぐからベンチが揺れてんだよ」
「それもごめん」
「ふふっ、ナナちゃん安心して。私もフシギダネの時レッドの足踏んづけたから」