第11章 お祭り騒動
腕を回してグリーンの背中に身体を寄せると、背中越しに伝わる心音が私の鼓動と重なった。
鼓動が高鳴るのは、この光景に包まれているからなのか、グリーンとこうしているからなのか。
たぶん、どちらもだ。
「なぁ」
「うん?」
「シルバーとなにしてたんだよ」
「なにって、ニューラちゃんが見つかって休んでた」
「なら連絡ぐらいしろ。心配するだろ」
「ごめん…」
「……あいつ、必要以上に気にしてないといいけどな」
「シルバーくん、ああ見えて真面目だもんね」
「てか、ほんとにニューラがかんざし持って逃げたのか?オレが来た時はおとなしかったよな」
「ニューラちゃんね、あの庭園に着いたらすぐに返してくれたんだ。まるで私たちを誘導しているみたいだった」
「そんで、お前らふたりはまんまとニューラの策にハマったというわけか」
「たぶんだけど、風鈴をシルバーくんに見せたかったんだと思う」
思わずクスリと笑みをこぼすと、グリーンが背中越しに振り返り、横目で私を見てくる。
「で、その羽根は?」
「お詫びにってくれた。ホウオウの羽根なんだって」
「それ、ヒビキやワタルにも渡してたぜ。ついにナナを認めたってワケだ」
「やった!“知り合い”から昇格できたのかも!」
嬉しさと共にあの記憶が蘇る。
抱き寄せられ、額への控えめなキス。
驚きと動揺のあと、残されたのはシルバーくんの微かなぬくもりだけ。
「……」
心に芽生えた複雑な感情を整理しきれず、口を閉ざす。
グリーンに縋るように、腕を回す力を強めた。
「どうした?」
「なんでもない」
「そうは見えないな」
探るような口ぶりに心がざわつく。
「なんでもないってば…」
「ま、いいぜ。全部話さなくても」
動揺は見透かされている。罪悪感のようなどろどろした何かが、胸の中に溜まっていく感覚がする。
「その羽根はオレへの宣戦布告として受け取っておく」
「え?」
「え?じゃねーよ」
グリーンは鼻先で笑って、私のこめかみにコツンと頭をぶつけてくる。
「お前はこれからも、このグリーン様だけを考えてればいーんだよ」
不意に訪れるオレ様モード。いつも翻弄されっぱなしなのでたまには反発してみる。
「でもグリーン様、待ち合わせ遅れるからどうしようかなぁ」