第11章 お祭り騒動
さっきは遠慮して強がってみたものの、指の痛みは治まらず、裸足になろうとしたら見かねたグリーンが背を向けて目の前で屈んだ。
断ると、拗ねたような声が返ってくる。
「なに今更恥ずかしがってんだよ。ガキの頃、お前が転んでよくおぶってただろ」
「でも、今の私じゃ重くてグリーン潰しちゃうかも」
「平気だって」
「絶対に無理しない?」
「いいからはやく」
「じゃあ、少しだけ…」
不安になりながらも、そっと背中におぶさる。グリーンは軽く身体を揺らして体勢を整えると、ゆっくり歩き始めた。
「重いでしょ?」
「楽勝だ」
「よかった…」
と呟いて、この方法は非効率なのでは?と気がついた。
「ねぇ、よくよく考えたら、ピジョットの方が早くない?」
「そうだけどさ、歩きで寄りたいところがあんだよ」
グリーンは、私とシルバーくんが歩いたのとは別の道を進んでいく。
遠回りじゃない?と聞こうとしたタイミングで、突然目を奪われる景色が眼前に広がった。
「え…すごい…」
「お前を探してて見つけた」
グリーンが足を止める。
小道の脇に組まれた木枠に飾られた、数えきれないほどの色とりどりのかざぐるまが一斉に回り始める。薄ぼんやりとした提灯の灯りが照らす幻想的な光景に、思わず言葉を失った。
「そういえば、初めてデートした町もかざぐるまがいっぱいあったね」
思い出の一つひとつが鮮明に蘇る。泣いたり、笑ったり、怒ったり。
パシオでの日々は大変なこともあったけど、どれも忘れたくない大切な思い出だ。
「またあの町に行きたいね」
「そうだな」