第11章 お祭り騒動
「ボサっとしてるなよ」
片手で腰を抱き寄せ、人にぶつからないよう庇ってくれた。
「あ…りがとう」
顔が近くて緊張が走る。シルバーくんは私の足を見て、険しい顔つきを見せた。
「その足じゃ歩けないな」
「大丈夫……って言いたいけど、足手まといになっちゃうね」
右足の指の間は皮膚が剥がれ赤くなってしまっていた。
手伝いたいのにこれじゃあ自由に動き回れない。不安と無力感が心を蝕んでいく。
「…悪かった」
「え?」
シルバーくんは私を抱き寄せたまま、消え入りそうな声で話す。
「お前の大事なものなんだろ。オレが必ずニューラから取り返——」
「シルバーくん!いた!あそこ!」
ニューラがこちらを一瞥し、暗がりへと歩いていくのが見えた。痛みも忘れ、慌ててニューラの姿を追う。
「おい、無理するなって!」
「平気!」
シルバーくんは舌打ちすると、私の腕を掴んだ。
「あっちだな?」
「うん!あの池のほとりにいる!」
「転んだら置いてくからな」
念を押すようにギロリと睨んでくる。
「気をつけます!」
そのまま腕を引かれながら歩いていくと、風情のある和風庭園に着いた。
ニューラは池のほとりにある竹製の縁台に腰掛け、素知らぬ顔で脚をぷらぷらしている。縁台は背もたれの部分にたくさんの風鈴が吊るされ、心地よい音を奏でながら私たちを出迎えてくれた。
「ニューラ、それを返せ」
シルバーくんが手を差し向ける。
「ニャンッ」
すると、ニューラは素直にかんざしを返した。
追いかけっこは呆気なく終了。
拍子抜けすると共に、私の口から安堵のため息がこぼれ落ちた。
「バカに素直だな。鬼ごっこしたかっただけか?」
ニューラはぷいとそっぽを向いた。