第11章 お祭り騒動
「なんでこんなことした?欲しいなら買ってやるのに」
ニューラはシルバーくんの言葉に反応を見せない。
膝に手をつき、ニューラの顔に目線を合わせて話しかける。
「返してくれてありがとう。でも次からは、貸してほしい時は教えてね?」
ニューラはツンと顔を逸らしたままだ。
「えと、欲しかったわけじゃなかったのかな?」
「こいつの真意はわからねーが、とりあえずあとで言い聞かせておく」
シルバーくんはニューラの隣に腰を下ろすと、目だけで「ここに座れ」と促してきた。
まるでレッドみたいと思いながら、言われるがまま、というか見られるがまま?シルバーくんの隣に腰掛ける。
無理して歩いたせいで、足は悪化してヒリヒリしている。座って初めて足の疲労を自覚した。
今度は頭を向けるよう言われたので、くるりと身体をひねって背中を預ける。
「これって、頭にぶっ刺せばいいんだよな?」
どうやらかんざしを着けようとしてくれているらしい。
「いやあの、気持ちは嬉しいけど頭には刺さないでね?髪にお願いね?」
「ごちゃごちゃうるさいな」
悪態をつきながら、シルバーくんが私の髪にそっと触れる。
涼やかな風が頬をかすめた瞬間、カコン、とししおどしの音が庭園に響いた。
縁台に吊るされた沢山の風鈴が、耳元で優しく音を奏でる。
こんなに素敵な場所なのに、私たちしかいないのが不思議だ。
明かりが少なくて薄暗いから、みんな気づいていないのかもしれない。
「きれいな場所だね。まるでニューラが連れてきてくれたみたい」
「たまたまだろ」
「そうかなぁ」