第11章 お祭り騒動
「……今日は、随分とはりきってるんだな」
シルバーくんが目を逸らしたまま話しかけてきた。
「はりきってる」というのは、たぶん浴衣のことだろう。
「うん、着付けがんばったんだよ!似合うでしょ?」
と言って、立ち上がり一回転してみせる。
「ああ」
「これね、作り帯じゃなく自分で結んでるんだよ!浴衣の柄も見て!」
「まぁ…いいんじゃないか、たまにはそういうのも」
「んん?」
思っていた反応と180度違くて拍子抜けする。
「もしかして、シルバーくんじゃなくてメタモン?」
目元が「・」になってないかじーーっと覗き込むと、シルバーくんが顔を赤くしながら後退する。
「お、お前っ!ふざけてんのかっ!」
「その口の悪さは…本物?」
「当たり前だろ!なんだよ急に!」
「…っ!ごめんっ!」
本物とわかった途端、恥ずかしくなり身体を縮こませてベンチに座る。
いつもからかってくるからわざと大袈裟に自画自賛したのに、これじゃあ自己肯定感モリモリな人みたいだ。
「お前、人をおちょくってんのか?」
眉間の縦皺がシルバーくんの苛立ちを物語っている。
「だって、いつもなら『浴衣だけは綺麗』とか『浴衣しか目に入らなかった』とか言いそうだから、つい」
「……なら、仲良しこよしな幼馴染さんにたっぷり褒めてもらうんだな」
「待って!そういうつもりじゃ…!」
立ち去ろうと背中を向けたシルバーくんの腕をニューラが掴む。
驚いた顔でシルバーくんが立ち止まった。
「ニューラ…どういうつもりだ?」
ニューラはシルバーくんを引き止めながら、なにか言いたげに見つめている。
「もしかして、まだここにいたいのかな?」