第11章 お祭り騒動
なんとなく聞いただけだったのに、リーフちゃんは夜空を見上げながら困ったように「うーん」とうなった。
「たぶん話してないんじゃない?わたしからも伝えてないし」
「そうなのかな」
「ほら、あのふたりはライバルでもあるし親友でもあるから」
「なら全部話してそうだけどな」
「ううん、その逆」
リーフちゃんは唇の端をほんの少しだけ上げた。どこかやるせなさを含んだ笑みだった。
「きっと、だからこそ言えないんだよ。でもそれってちょっとずるいよね」
「ずるい?」
「親友を傷つけたくない、けれどナナちゃんは手に入れたい、ねっ?ずるいでしょ」
「傷つくって、レッドが…?」
リーフちゃんは少し寂しげに微笑んだ。
「全部は言わないよ。でもわかるでしょ?」
レッドが私のことを?
まさか、ありえない。そんなはずはない。
無口で、優しくて、真面目なレッド。私にとって憧れの幼馴染であり、おにいちゃんのような存在。
冗談だって言ってほしい。そんなわけないでしょって笑ってほしい。
でも、リーフちゃんの表情はどこか切なげで、それが否定の言葉を喉の奥で止めてしまう。