第11章 お祭り騒動
「ええなぁこれ、ほんまきれいやわ…」
マーシュさんはかんざしを提灯の灯りにかざし、うっとりと目を細める。
「あの、マーシュさん?」
「ああ、かんにん。みとれてて渡すん忘れてた。これな、みどりがグリーンさん、ピンクがナナさんなんよ」
マーシュさんは、かんざしを私の手のひらに乗せてはんなりと笑った。
「かわいい!色合いがとってもきれい!」
「天然石はうちからのサービスさかい、これでふたりいつも一緒やね」
商売上手なマーシュさん。もう私は完全にこのかんざしに心を奪われてしまった。
巾着から財布を出そうとしていると、グリーンが私の手のひらから、ひょいとかんざしを取る。
「じゃあこれをくれ」
「おおきに〜♪」
会計を済ませると、グリーンはそのまま私の髪にかんざしをつけてくれた。
「どうだマーシュ?似合ってるだろ?」
「あらあら、パシオ一のべっぴんさんやね」
おべんちゃらだとはわかってても、きれいな声で褒められて心が浮き立つ。
「いいの?これ」
「ああ、大事にしろよな」
グリーンが指先でかんざしをシャラリと鳴らした。
「ありがとう…!」
みどりとピンクがキラキラとかんざしの先で踊れば、私の心も嬉しさが弾けて踊る。
「さて、あいつらが寂しがってるだろうからそろそろ戻るか」
「そうだね、私も寂しいし」
「オレ様が隣にいるのに贅沢だな」
グリーンが手を結んできた。
「グリーンは腕を組むより手を繋ぐ方が好き?」
「どっちもだな」
「贅沢だね」
「このグリーン様をひとりじめできるナナがいちばん贅沢なんだよ」
大会で忙しくてなかなか会えなかったから、こんな風にふざけ合うのも久々に感じる。
会話の一つひとつが楽しくて愛しくて。話すたびにグリーンが大好きなんだと自覚する。
「あのねグリーン、ほんとにありがとう。ずっと大事にするね」
「おう、めずらしく素直だな」
グリーンが繋いでいない方の手でそっと私の髪を撫ぜた。
去り際にマーシュさんにもお礼を言うと、マーシュさんは手を振りながら「ほんまにお似合いやわぁ」と呟いた。