第11章 お祭り騒動
「ええ浴衣やね。淡うて、品があって」
私の浴衣を眺めながらコロコロと笑うおねえさんに、グリーンが声をかける。
「よっ、マーシュ。このアクセサリーはオリジナルか?」
「そうなんよ。せっかくの夏祭りやし、うちもお店、出そ思てね。かんざしをデザインしてみたんよ」
そう言いながら、マーシュさんは大きな黒目で私を見つめると、振袖で口元を隠し、ふふふと上品に笑う。
「グリーンさん、かわいらしい子連れて……ほんま、隅に置けへん人やな」
「まぁな。で、こいつをさらにかわいくするためにかんざしを見繕ってくれないか?」
「もちろんええよ。ほな、これなんかどうやろか?」
マーシュさんが選んでくれたかんざしを手に取る。
「ステキです…華やかで、花のモチーフがきれい…」
「他にも気になるのがあったら手に取って見てな」
「ありがとうございます」
どれもかわいくてきれいで目移りしてしまう。
そんな中、デザインが小ぶりなかんざしを選んで手のひらに乗せた。
「これもかわいいですね」
「それやと主張が控えめやし、浴衣の柄とのバランスを見たほうがええなぁ」
「なるほど、バランスを意識するんですね」
「これはどうだ?」
グリーンが選んだのは、小さな小花が散りばめられ、色彩豊かなガラス玉が施されたかんざしだった。
華美でもなく、地味でもない、涼しげな色合いが綺麗なデザインだ。
グリーンは、私の頭にかんざしを近づけてマーシュさんに意見を求める。
「ほら、ナナらしいし、浴衣にも合ってるんじゃねーか?」
「ほんまやな、よう似合うてはるわ。さすが彼氏さんは違うわぁ。ちょっと待ってな」
マーシュさんはキラキラした石がたくさん入ったケースから、透明な緑とピンクの小さな石を取り出すと、工具を使い素早くかんざしに石をふたつ取り付けた。