第11章 お祭り騒動
「行くか」
「うんっ」
人混みの中、離れないようしっかりと腕に掴まって進む。
サンダルじゃなく下駄を履いてきてよかった。歩くたび、カラコロと鳴るのが楽しい。
浴衣が着崩れないよう、自然と歩幅が狭くなる。グリーンは私に合わせて歩くスピードを落としてくれて、そんなさりげない優しさが垣間見えるたびに嬉しくなった。
本音を言うと、人前で腕を組むのは初めてでドキドキだ。暑さと緊張が混じり顔が熱い。それでもこの腕を離したくない。
私って、自分が思っている以上に独占欲が強いのかもしれない。
賑やかな祭りの風景を楽しみながらしばらく歩くと、ハンドメイド系の屋台が並ぶ通りに着いた。
風鈴やガラス細工、アクセサリーなど、どれも可愛くて目を引くお店ばかりだ。
「さっき警備しててここら辺の店が良さげだったからチェックしておいたんだ」
「かわいい!おしゃれ!リーフちゃんにも見せたい!」
「だーからっ、ナナちゃんさぁ〜」
人目を気にすることなく肩を抱き寄せてくる。
「人のことよりまずは自分、な?」
「でも、せっかくみんなで来てるのに…」
「あいつらとはまた後で来ればいーじゃん」
と話すと、少し言い淀んでから続ける。
「最近あまり会えなかったしな。もう少しふたりでいたいんだよ」
「グリーン…」
確かに、最近本戦で忙しくてあまり会う時間を取れなかった。
だから私も会いたかった。こうしてふたりで。
「って、お前が思ってるとオレ様はお見通しだから、こうしてデートの時間を作ったってわけだ」
「なんかずるい!その言い方!」
まるでグリーンじゃなく、私が望んだからそうしたみたいに言う。
「でも図星だろ?」
悪戯っぽく笑う。憎らしいのにドキドキしてしまう自分が悔しい。
「あら、そこのおふたりさん、ようお似合いやこと」
不意に、ジョウトのエンジュ訛りで、鈴の音のように心地よい声が耳に届いた。
声の方へ向き直ると、華やかできれいなおねえさんがこちらに向かい手招きをしている。
手元まで隠れる振り袖は鮮やかな羽のよう。まるで、ようせいのように美しい人に思わず見とれてしまった。