第11章 お祭り騒動
屋台はたこ焼きやわたあめ、焼きそばなどの昔ながらの定番メニューから、各地方の名物まで勢ぞろい。見て回るだけでもわくわくする。
中でもいちばん人気だったのはアローラ名物の「マラサダ」という食べ物で、20分並んでようやく買うことができた。
「おいしい…!」
マラサダのあまりの美味しさに、頬に手を添えて噛み締めた。
砂糖がまぶされたパン生地は、からっと揚がって外はサクサク中はふわふわ。ひとくちかじれば中から甘いクリームがとろりとあふれ、頬張るたびに幸せが広がっていく。
「な?これうまいよな」
グリーンもマラサダをパクパク食べている。
サンダースにもマラサダを手でちぎってあげると、目をキラキラ輝かせて感激していた。
「ナナちゃん、味見しあいっこしない?わたしのはチョコレート!」
「する!リーフちゃんもこれ食べてみて!イチゴクリーム!」
チョコレート味は甘さとカカオのほろ苦さが絶妙なバランス!
「チョコおいしすぎ!もういっこいけそう」
「わたしも止まらない」
リーフちゃんと、互いのマラサダを褒めちぎり合いながら完食した。
食べ終わって余韻に浸っていると、レッドが私の肩を叩く。
「……!」
「え?頬にクリームついてる?」
レッドは頷き、親指で私の頬についたクリームを拭うと、そのままその指をサンダースの顔の前に持って行った。
サンダースはレッドの指をペロリとひと舐めして、クリームの味にごきげんになった。それを見てレッドも笑顔になる。
「ありがとレッド。あ、レッドも…」
「?」
口元を指さして教えたけれど取れていないので、ハンカチでそっと拭き取ってあげた。
レッドは少し照れくさそうに帽子を目深に被り直し、控えめに微笑んだ。