第11章 お祭り騒動
離れた私に気がつき、リーフちゃんが手招きしてくる。
「ほら、ナナちゃんもこの前足の関節のスキマを嗅いでみて!」
「い、いや、私はいいよ」
「もったいないですよ!こんなにかぐわしいのに!」
「いえいえ、見てるだけでいいから、どうぞふたりで楽しんで!」
盛り上がるふたりのテンションについていけそうにないので丁重にお断りした。
やめておけばいいのに、サンダースはフシギバナに恐る恐る近づいていき、リーフちゃんがおすすめしていた“前足の関節のスキマ”をくんくんする。と、嗅ぎ終わった瞬間に光速でこちらに駆けてきた。なんとも言えない表情で、目をしぱしぱさせながら前足で顔を必死に洗っている。
(臭かったんだ…)
まぁ、趣味嗜好は人それぞれだからね…。
涙目のサンダースの鼻をハンカチでゴシゴシしながら、グリーンたちの様子を確認すると、まーぁだ楽しそうに話し込んでいる。
「お祭りの警備してたの?終わったならあたしたちと周ろうよ」
「いや、この後約束してるからさ」
それにしても、声が聞こえるほどの距離にその“約束してる相手”がいるのに気が付かないものなのだろうか。モヤモヤが募る。
「えぇ〜じゃあ連絡先交換は?」
「あぁ、交換してもオレたち忙しくて返す暇ないかも。だよな、レッド?」
「…!」
「え〜つめたい〜」
断りながらもまんざらではない様子。
そりゃそうだよね。きれいなおとなのおねえさんたちに迫られたらね。いつも一緒にいるのは地味な私だもんね。それはそれは刺激的でしょう。
なんていじけつつ、三者三様、個性豊かなファンサを見ていたらなんだか可笑しくなってきた。
みんなあんなに強いのに、敷居が低いというか、気さくというか。
そんな飾らない3人が、やっぱり私は大好きだ。
「ぷくちッ!」
「あ、ごめんね」
ハンカチがくすぐったかったみたいで、サンダースがかわいいくしゃみをした。