第10章 親子のカタチ
「おいレッド!」
「…?」
リザードンの翼の手入れをしていたレッドは、“?”を浮かべてこちらへと振り向いた。
「どこ行くつもりだ?……あーはいはい、氷河エリアでフリーザーを鍛えたいって?」
「……!」
「修行相手になれって?オレはナナを送るからな。シルバーに頼んだらどうだ?」
ワザとらしい誘導だな。だが、願ってもない話だ。
レッド——グリーンと同じく最年少でカントーのチャンピオンになり、たったひとりでロケット団を壊滅させた伝説のトレーナー。
戦えば何か得られるかもしれない。オヤジを打ち負かした強さのヒントを。
「…?」
「一緒に修行するか?だってさ」
…さっきも思ったが、
「なんであんたらは無言の相手と会話できてんだよ」
「そりゃあお前、幼馴染の勘ってヤツ?」
全くわからない。どういうことだ?
「修行するにしても、オレだと会話が成り立たないな」
「ああ、ならオレも行く。ナナを送ってから合流するから先に向かっててくれ」
「それなら私も観戦に行きたい!邪魔しないから!」
ようやく距離を置けると思ったのに、またこいつは首を突っ込んでくる。
「ってナナが言ってるけど、ふたりはいいか?」
レッドがノーと言うはずがない。答えは聞く前から決まってるようなものだ。
「…うん!」
ほら見ろ。ニッコニコ頷いてやがる。
さてはグリーン……話の展開を先読みして全部ナナが喜ぶように持っていったな?結局、グリーンの掌の上で踊らされてたってわけか。
「やっぱり甘やかしすぎだ」と胸中で毒づいて、渋々返事をする。
「…邪魔しないならな」
「やった!ありがと!」
「グリーンさん!ボクもいいですか?」
「おう!ヒビキも来いよ」
「ありがとうございます!シルバー、レッドさんたちにタッグバトルしてもらおうよ!」
「フン、足引っ張んなよ」
こうして、Nやトウヤ、クリスとコトネとは解散したが、騒がしい連中と修行をする羽目になり、結局夕暮れまで賑やかな時間を過ごしたのだった。