第10章 親子のカタチ
ふぅとため息をつきつつ、渋々と口を開く。
「…お前の言う通り、今日は疲れてんだよ。疲れてるからこそほっといてほしいんだ。お前にはわからないだろうけどな」
「そっか…。でも、無理しないで休まないとだめだよ?」
「余計なお世話だ。母親にでもなったつもりか?」
「そんなつもりはないけど、いろいろあった後だもん。心配だよ」
自分で発した「母親」という言葉に、なぜか自分自身が少し動揺している。
母親なんてオレにはいない。どこにいるのか誰なのか、消息もまるでわからない。
仮に母親というものが存在するならば、こいつみたいにいつでもどこでも無条件で心配して寄り添って、見守ってくれるものなのだろうか。
——って!だからオレはこいつをなんだと思ってるんだ!?
もうダメだ。これ以上こいつといると頭がおかしくなりそうだ。
「じゃあな」
と、そっぽを向いたところで、面倒なヤツがもうひとり現れた。
「ナナ!いつまでシルバーを口説いてんだよ」
「口説いてないよ。修行するって言うから休んだ方がいいよって説得してたの」
「やれやれ。わかってないな、男心ってヤツを」
「うん、全然わかんない」
オレの背中のすぐ後ろで会話が始まった。わかってないのはグリーンも同じだ。
苛立ちが抑えられず歯噛みする。
こっちはな、こうやってグダグダと話しかけられるのが何よりも鬱陶しいんだよ…!