第10章 親子のカタチ
Nたちの会話に耳だけ参加していると、少し離れて電話していたグリーンがこっちに戻ってくるのが見えた。
「ドリバルから連絡がきた。パシオ各地でのロケット団の暴動が収まったみたいだし、セントラルシティに戻ろうぜ」
グリーンの言葉に促され、みんなが帰り支度を始める。
「どこに行くの?」
バレないようにひとりで立ち去ろうとしたのに、おせっかいなこいつは、めざとくオレに声をかけてきた。
「修行だよ。サカキと戦って、いろいろと思い知らされたからな」
パシオに来てホウオウと出会い、少しは最強へと近づけたかと思っていた。
だが、オレは弱い。まだまだたりない。
居心地の良い環境にいつまでも甘えているわけにはいかないんだ。
…は?オレは何を考えてる?「居心地の良い」ってなんだ?
オレにとっての居心地の良さって……?
「でも、絶対シルバーくん疲れてるよ。ポケモンだって…」
目の前のナナは心配そうにオレを見ている。その顔が余計にオレをイラつかせる。
「わかってる、ホウオウはちゃんと休ませる。他のヤツらを鍛えたいんだ」
そう言っても納得がいってないようだ。何か言いたげな目で訴えかけてきやがる。
正直、こいつとはもう必要以上に関わりたくない。
また昨夜みたいに、自分が自分じゃなくなる感覚を味わいたくない。
あの時はどうかしていた。オレはお前なんか認めてない。お前のことなんか必要じゃない。
WPMが終わるまでの一時的な関係。
大会が終われば、お前とはもう関わることなんかないんだ。